相続前と相続後、その土地をいつ売る?
ある土地を相続する前に売る場合と相続した後に売る場合、これらに税金上の違いは出るのでしょうか。
次の例題から実際に計算し税金の違いや手元に残る金額を確認してみましょう。
- 土地の時価(=売価)は1億円(令和X1年、X5年ともに変わらず同額と仮定)
- 土地は50年以上前に500万円で取得
- 仲介手数料等の諸費用はかからない
- 土地の売却代金は残っていると仮定
- 適用される相続税率は30%とする
- 相続税評価額は時価の8割とする
ケースⒶ 譲渡(令和X1年) ➡ 相続(令和X5年)
100,000,000円(売価)-5,000,000円(取得価額) = 95,000,000円(課税所得)
95,000,000円×20.315%(所得税15%+住⺠税5%+復興税0.315%) = 19,299,250円(所得税等計)
100,000,000円-19,299,250円 = 80,700,750円(差引⼿取額)
令和X5年の相続に係る相続税の計算(課税対象:現預金)
80,700,750円×30% = 24,210,225円(相続税)
以上より、譲渡➡相続後に手元に残るお金
100,000,000円(売価)-19,299,250(所得税等)-24,210,225円(相続税)=56,490,525円
ケースⒷ 相続(令和X1年) ➡ 譲渡(令和X5年)
100,000,000円(時価)×0.8=80,000,000円(相続税評価額)
80,000,000円×30%(相続税率)=24,000,000円(相続税)
令和X5年、相続後、5年経ってその土地を譲渡した場合の所得税等の計算
100,000,000円(売価)-5,000,000円(取得価額)=95,000,000円(課税所得)
95,000,000円×20.315%(所得税15%+住⺠税5%+復興税0.315%)=19,299,250円(所得税等計)
以上より、相続➡譲渡後に手元に残るお金
100,000,000円(売価)-19,299,250(所得税等)-24,210,225円(相続税)=56,490,525円
結論
若干の差がありますが、このケースでは税負担はどちらもほとんど変わりません。
注意点として、ケースⒷの場合、相続登記の費用が生じ、所有している期間の固定資産税の負担もあります。
その一方で、その譲渡が相続税の申告期限から3年以内のものの場合、所得税・住⺠税計算において、相続税額を取得費に加算する特例の適⽤が考えられます。
土地の相続税評価額は時価の8割と言われていますが、実際には8割よりも多いことも少ないこともあります。
ですから相続まで土地を所有することは、時価が上がると見込むのか、下がると見込むのかで、その対応は異なることになります。