貸借対照表の純資産の部は、大きく「株主が出したお金」と「会社が稼いで残したお金」の2つでできています。
中小企業の決算書なら、この2系統をおさえるだけで全体像はつかめます。
貸借対照表は、決算日時点の会社の財政状態を表します。
左側が「資産の部」(お金の使い途)、右側の上部が「負債の部」(お金の出どころ=借入)、下部が「純資産の部」(お金の出どころ=自己資金)です。
この記事では、決算書の数字を例に、純資産の部の全項目を上から順に解説します。
目次
純資産の部は「株主が出したお金」と「会社が稼いで残したお金」で構成される

純資産の部は、株主が出した「元手」と、会社が稼いで残した「利益」の2系統で構成されます。
元手にあたるのが資本金や資本剰余金、利益にあたるのが利益剰余金です。
①株主から託されたお金で、会社運営の元手となるのが資本金。
②設立から現在まで、その元手を事業に投下して回し、蓄積された利益のうち社内に留保されたものが利益剰余金です。
下の図は、実際の決算書の純資産の部の構成です。
大きくは株主資本・評価・換算差額等・新株予約権の3つに分かれ、株主資本がその中心を占めます。

なお、純資産の部の金額は、資産の含み益や含み損、帳簿に載っていない簿外資産・簿外負債を反映しない、いわゆる簿価ベースの数字です。
株主資本は資本金・資本剰余金・利益剰余金で構成される
株主資本は純資産の中心で、資本金・資本剰余金・利益剰余金の3つから成ります。
このうち資本金と資本剰余金が「株主が出した元手」、利益剰余金が「会社が稼いで残した利益」です。
資本金は株主が拠出した会社の元手
資本金は、会社の設立に際して、事業の元手として株主が拠出した金額です。
通常、その拠出割合が会社への支配権や、解散時の財産分配権などを表します。
今回の例では3,000,000円が計上されています。
資本剰余金は出資のうち資本金に組み入れなかった部分
資本剰余金は、株主からの出資のうち、資本金に組み入れなかった部分です。
資本金と同じく株主が出した元手ですが、資本金とは区別して記録します。
今回の例では計上がなく、0円です。
利益剰余金は会社が稼いで社内に残した利益
利益剰余金は、会社が稼いだ利益のうち、配当などで社外に出さず社内に残したものです。
設立から現在まで、元手を事業に投下して回した結果、蓄積された利益にあたります。
今回の例では35,750,000円で、株主資本の大部分を占めます。
内訳は次の章で分けて見ていきます。
※このほか、会社が自社の株式を買い戻した場合に「自己株式」という項目が現れます。
純資産から差し引くマイナスの項目で、今回の例では計上がないため表には出てきません。
利益剰余金は利益準備金とその他利益剰余金に分かれる
利益剰余金は、利益準備金と「その他利益剰余金」に分かれます。
その他利益剰余金は、別途積立金と繰越利益剰余金で構成されます。
今回の例では、利益準備金750,000円と、その他利益剰余金35,000,000円(別途積立金5,000,000円+繰越利益剰余金30,000,000円)です。
利益準備金は配当時に積立が義務づけられた準備金
利益準備金は、配当を行うときに会社法で積み立てが義務づけられた準備金です。
配当をすると、資本金の4分の1に達するまで(資本準備金がある場合は両者の合計で判定します)、配当額の10分の1を利益準備金として繰越利益剰余金から振り替えます。
今回の例では、資本金3,000,000円の4分の1にあたる750,000円が計上され、積立の上限に達した状態です。
配当は、株主が利益の還元を受ける一方で、その利益の一部が債権者保護の原資として社内に確保される仕組みでもあります。
利益準備金は、その確保のための項目です。
別途積立金は目的を定めず任意に積み立てた利益
別途積立金は、特に使い道を定めず、任意に繰越利益剰余金から振り替えて積み立てた利益です。
積み立てや取り崩しは、株主総会などの決議によって行います。
別の名前で表示されていますが、繰越利益剰余金と同じく、会社に留保された利益の一つです。
今回の例では5,000,000円が計上されています。
貸借対照表では、利益剰余金のなかの「その他利益剰余金」に位置します。
繰越利益剰余金との違いは、使い道です。
繰越利益剰余金がそのまま配当などに回せるのに対し、別途積立金は決議を経て積み立て、取り崩しにも決議が必要です。
仕訳は、積み立てるときと取り崩すときで借方・貸方が入れ替わります。
- 積立:(借方)繰越利益剰余金 /(貸方)別途積立金
- 取崩:(借方)別途積立金 /(貸方)繰越利益剰余金
繰越利益剰余金は分配せず会社に残した利益の累計
繰越利益剰余金は、設立以後に蓄積された利益のうち、まだ分配せず会社に残している累計額です。
配当を行っている場合は、配当した分だけ減っています。
今回の例では30,000,000円で、純資産のなかでも大きな割合を占めます。
この金額がマイナスのときは、設立以後その時点までに積み上がった損失の累計を表します。
自己資金が目減りしている状態のため、注意して見たい項目です。
評価・換算差額等と新株予約権は中小企業では計上されないことが多い
評価・換算差額等と新株予約権は、中小企業の決算書では計上されないことが多い項目です。
今回の例でもどちらも0円ですが、表に項目がある以上、意味を確認しておきます。
評価・換算差額等は、保有する有価証券などを時価で評価したときの、簿価との差額をまとめたものです。
損益には含めず、純資産のなかで一時的に表示します。
新株予約権は、あらかじめ決めた価格で将来この会社の株式を取得できる権利です。
ストックオプションなどがこれにあたります。
純資産の部から自社の体力を知る
純資産の部は、株主が出した元手と、会社が稼いで残した利益の積み重ねです。
返済の必要がない自己資金であり、その厚みは会社の体力をそのまま表します。
特に利益剰余金は、これまでの利益の蓄積です。
ここが厚い会社ほど、外部に頼らず事業を続けられる余力があります。
逆に繰越利益剰余金がマイナスなら、過去の損失が自己資金を削っているサインです。
自社の純資産をどう読み取ればよいか、判断に迷う場合は、当事務所までお問い合わせください。
決算書の数字をもとに、御社の状況に即してご説明します。
「純資産の部」は会社法の施行前まで「資本の部」と呼ばれていました。中小企業では、名称が変わった程度に捉えて差し支えありません。

