相続税の取得費加算とは
相続があって、相続人が亡くなられた方から不動産や預金などの財産を相続して、相続税を納めていた場合に、その後、その相続した不動産を譲渡することとなったのが、亡くなられた日から3年と10ヵ月以内(相続税の申告期限から3年以内)である場合には、納めた相続税のうち、今回譲渡した不動産に係る部分の相続税相当額を、譲渡所得税の計算において、収入金額から控除することとなる「取得費」として加算することができます。
取得費加算の具体例
相続税評価額が2000万円の土地を含めて、1億6000万円の財産を相続し、相続税を4000万円納税したというケースで、その土地を3000万円で売った場合
売った⾦額3000万円 ー 亡くなられた⽅がその⼟地を買った⾦額●●万円 = 譲渡所得
となるのですが、
被相続人が、これをバブル期に4500万円で買っていたとすると、3000万円−4500万円=△1500万円の譲渡損で、取得費加算の出番はありません。
しかし、昭和50年頃に800万円で買ったとしたら、そのままでは3000万円−800万円=2200万円の譲渡所得ですが、この時に、相続で負担した相続税を取得費として加算できるのです。
相続税4000万円×(土地相続税評価額2000万円÷相続財産1億6000万円)=500万円
これを取得費として加算できますので、収⼊⾦額3000万円−(取得費800万円+相続税取得費加算500万円)=譲渡所得1700万円 となります。
取得費加算における注意点
譲渡所得の計算で取得費として引くのは、相続税の計算で使った相続税評価額ではないことにご注意ください。
× 売った⾦額3000万円−相続税評価額2000万円=1000万円
相続の際にその土地を2000万円と評価してそれに係る税金を払ったと言いたいところでしょうが、相続税は「相続による経済的価値の移転に着目した課税」であるのに対し、譲渡所得税は、「亡くなられた方の保有期間も含めた資産の値上がり益」を課税の理由としています。
換言すれば「あなたは資産家の親から財産をもらえてよかったね、そんな親の子であったことはラッキーなんだから税金頂戴」と「いくらで買っていくらで売ったから、いくら儲けたので税金頂戴」と異なるわけです。
ですから取得費となるのは、買った金額なのです。
この“取得費加算”は、「相続税の課税対象となった財産を一定期間内に譲渡した場合には、相続税と所得税が課税され租税負担が重くなることから、譲渡所得の計算上、譲渡資産に対応する相続税相当額を取得費に準じて扱うことを目的として創設された制度」とのことです。