事業で使う備品や設備を購入した時、その費用をどのように経費計上すべきか迷ったことはありませんか?
実は購入金額によって、経費にできる方法が異なります。
この記事では、固定資産の減価償却について、基礎から金額別の処理方法について解説します。
目次
固定資産は減価償却で費用化する
「今期は利益が多く出そうだから、高額な設備を買って税金を減らそう」と考えても、残念ながら高額なものを購入した年に全額を経費にすることは認められません。
パソコンや機械設備、車両といった高額なものは、通常、何年間も使い続けることができるからです。
1年だけで使い終わるものではないため、使用できる期間に応じて、少しずつ経費にしていく必要があります。
このように、固定資産を期間按分して少しずつ経費にしていく会計処理を減価償却といいます。
法定耐用年数で経費化の期間が決まる
「この機械はあと5年使える」「このパソコンは3年で買い替える」など、実際に何年使えるかは個別の事情によって異なります。
しかし、償却する期間を自由に決められるようにすると、利益調整が自由にできてしまい、税金の公平性が保てません。
そのため、その資産の用途に応じ、償却期間である「法定耐用年数」が定められています。
たとえば、パソコンなら4年、普通乗用車なら6年といった具合です。
この法定耐用年数に基づいて、毎年経費にできる金額が客観的に計算される仕組みになっています。
金額によって変わる減価償却の方法
固定資産の減価償却には、購入金額によっていくつかの処理方法が用意されています。
金額が重要(多額)なものには厳格な管理が求められ、少額のものには簡便的な処理が認められています。
判断基準となる金額の考え方
処理方法を選ぶ際の金額判断は、会社の会計処理方法によって異なります。
22万円(税込)のパソコンを購入した場合、税込経理なら「20万円以上30万円未満」、税抜経理(本体価格20万円)なら「20万円」として判断することになります。
金額区分別の処理方法一覧
購入金額によって選択できる処理方法は以下の通りです。
| 全額経費 | 一括償却資産 | 少額減価償却資産 | 通常の減価償却 | |
|---|---|---|---|---|
| 30万円以上 | 不可 | 不可 | 不可 | 良 ○ |
| 20万円以上30万円未満 | 不可 | 不可 | 良◎ | 可 ○ |
| 10万円以上20万円未満 | 不可 | 良 ○ | 良 ○ | 可 ○ |
| 10万円未満 | 良◎ | 可 ○ | 可 ○ | 可 ○ |
※「良◎」は推奨される方法、「可○」は選択可能な方法を示しています
償却方法の特徴
全額経費(10万円未満)
購入した年に全額を経費計上できます
8万円のプリンターを購入した場合、その年の経費として8万円を計上します。
固定資産台帳への記載も不要で、最も簡単な処理方法です。
一括償却資産(10万円以上20万円未満)
その年で全額経費化できません。3年間で均等に経費化する方法です。
固定資産税の対象外であり、資産としての管理は不要です。
15万円のデスクを購入した場合、3年間にわたって毎年5万円ずつ経費計上します。
メリット
- 固定資産税の課税対象外になる
- 資産としての管理が不要
注意点
- その年に全額経費化することはできない。
- 途中で売却や除却をしても、3年間の償却は継続する
少額減価償却資産(20万円以上30万円未満)
購入した年に全額経費化できますが、固定資産税の対象となります。
そのため、売却・除却するまで、管理が必要になります。10万円以上20万円未満の固定資産については、どちらを適用するか検討が必要です。
25万円の業務用ソフトウェアを購入した場合、その年の経費として25万円を計上できます。
メリット
- 購入年度に全額経費化できるため、節税効果が高い
- 年間300万円まで利用可能
注意点
- 固定資産税の課税対象になる
- 売却、除却するまで固定資産台帳で管理が必要
- 償却資産申告の対象となる
通常の減価償却(30万円以上、または上記を選択しない場合)
法定耐用年数に基づいて、毎年一定の割合で経費化します。
60万円の車両(耐用年数6年)を購入した場合、定率法なら初年度約20万円、定額法なら毎年10万円ずつ経費計上します。
メリット
- 高額な資産でも適切に費用配分できる
- 減価償却方法(定額法・定率法)を選択できる
注意点
- 固定資産台帳での管理が必須
- 固定資産税(償却資産税)の課税対象
10万円以上20万円未満の資産はどちらを選ぶべきか
10万円以上20万円未満の固定資産については、「一括償却資産」と「少額減価償却資産」の両方が選択できます。どちらを選ぶべきかは、以下の観点で判断しましょう。
まとめ
固定資産の減価償却は、購入金額によって選択できる方法が異なります。
それぞれの方法には特徴があり、事業の状況や利益の見通しに応じて、最適な方法を選ぶことが重要です。
特に10万円以上20万円未満の資産については、固定資産税の負担や管理の手間、その年の利益状況などを総合的に判断して、一括償却資産と少額減価償却資産のどちらを適用するか検討することをおすすめします。
判断に迷う場合は、税理士など専門家に相談しながら、自社にとって最も有利な方法を選択しましょう。

