年末調整や確定申告が近づくと、「扶養に入れる」「入れない」といった話題が出てきます。
この扶養ですが、扶養家族という言葉は多くの方がご存知かと思います。
では、扶養家族に属する「扶養親族」という部類はご存知ですか?
扶養親族とは、配偶者以外の親族のうち、所得58万円以下などの条件を満たす人のことです。
該当する家族がいれば、年齢に応じて38万〜63万円の所得控除が受けられ、所得税・住民税が軽減されます。
この記事では、4つの条件、対象となる親族の範囲、年齢別の控除額、配偶者控除との違いまで、表と図を使って解説します。
令和7年の税制改正で変わったポイントにも対応しています。
みなさんのご家庭に置き換えて確認してみてください。
目次
扶養親族は「配偶者以外の親族」で4つの条件を満たす人
扶養親族として認められるのは、その年の12月31日時点で、次の4つの条件をすべて満たす人です。
配偶者(妻または夫)は対象外です。
配偶者には「配偶者控除」という別の制度が用意されています。
以下、各条件を具体的に見ていきます。
条件①|配偶者以外の親族(6親等内の血族・3親等内の姻族)
対象となる「親族」の範囲は、6親等内の血族と3親等内の姻族です。
血族は自分の血縁者、姻族は配偶者側の親族を指します。
具体的には、子・孫・ひ孫、父母・祖父母・曽祖父母、兄弟姉妹・甥姪、叔父叔母・従兄弟姉妹まで幅広く該当します。配偶者側でも、父母・祖父母・兄弟姉妹・叔父叔母が対象に含まれます。
対象範囲の詳しい図解は、次のセクションで紹介しています。
※このほか、都道府県知事から養育を委託された児童(里子)や、市町村長から養護を委託された老人も扶養親族の対象です。
条件②|納税者と生計を一にしている
「生計を一にする」とは、同じ家計で生活していること。
同一の生計であれば、同居でなくてもかまわないということです。
たとえば、大学進学で一人暮らしをしている子どもに学費や生活費を仕送りしている場合も、生計を一にしていると認められます。単身赴任中の家族や、別居する親に生活費を送っている場合も同様です。
つまり、別居していても日常的に生活費を負担していれば条件を満たします。
仕送りは銀行振込など記録が残る方法がおすすめです。
条件③|年間の合計所得金額が58万円以下【令和7年改正】
扶養親族の所得要件は、令和7年の税制改正で48万円から58万円に引き上げられました。
給与収入のみの場合、年収123万円以下が目安です。
給与収入123万円 − 給与所得控除65万円 = 所得58万円
「収入」と「所得」は異なる概念です。
収入は受け取った金額の総額、所得は収入から必要経費や各種控除を差し引いた金額。
扶養親族の判定では「所得」を使います。
具体的なケース別の判定方法は「所得58万円以下の判定方法」のセクションで解説しています。
条件④|青色・白色申告者の事業専従者でない
個人事業主の家族で、事業に従事して給与を受け取っている人は「事業専従者」に該当します。
事業専従者は扶養親族にはなれません。
個人事業を営む親の店を手伝い、専従者給与を受け取っている子どもは対象外です。
ただし、事業専従者給与を経費に計上できるため、別の形で税負担の軽減が可能です。
扶養親族の対象範囲|6親等内の血族と3親等内の姻族の図解
下の図は、扶養親族の対象となる親族の範囲を示したものです。
白い丸の数字(①〜⑥)が6親等内の血族、赤い丸の数字(❶〜❸)が3親等内の姻族を表しています。

自分の直系(子→孫→ひ孫、父母→祖父母→曽祖父母)だけでなく、兄弟姉妹の子(甥・姪)や叔父・叔母、従兄弟姉妹まで広く対象に含まれます。
実務上、意外と見落とされやすいのが配偶者の親(義父母)のケースです。
所得や生計の条件を満たしていれば、義父母も扶養親族に該当します。
同居していなくても、定期的に生活費を負担していれば対象になり得る点を覚えておいてください。
配偶者は扶養親族に含まれない|配偶者控除との違い

配偶者(妻または夫)は、扶養親族には該当しません。
配偶者には「配偶者控除」または「配偶者特別控除」という別の制度が適用されます。
両者の違いを表で整理します。
| 項目 | 扶養控除 | 配偶者控除 |
|---|---|---|
| 対象 | 配偶者以外の親族 | 配偶者のみ |
| 被扶養者の所得要件 | 58万円以下 | 58万円以下(特別控除は133万円以下) |
| 納税者の所得制限 | なし | 合計所得1,000万円以下 |
| 控除額 | 38万〜63万円(年齢による) | 最大38万円 |
年末調整の書類でも記入欄が分かれているため、混同しないよう注意してください。
扶養控除の対象は16歳以上|年齢区分と控除額の一覧
扶養親族がいれば自動的に控除を受けられるわけではありません。
扶養控除の対象となるのは、12月31日時点で16歳以上の扶養親族(=控除対象扶養親族)です。
年齢区分ごとの控除額を一覧にまとめました。
| 区分 | 年齢 | 所得税の控除 | 住民税の控除額 |
|---|---|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族 | 16歳以上19歳未満 | 38万円 | 33万円 |
| 特定扶養親族 | 19歳以上23歳未満 | 63万円 | 45万円 |
| 一般の控除対象扶養親族 | 23歳以上70歳未満 | 38万円 | 33万円 |
| 老人扶養親族(同居) | 70歳以上 | 58万円 | 45万円 |
| 老人扶養親族(別居) | 70歳以上 | 48万円 | 38万円 |
特定扶養親族(19歳以上23歳未満)は控除額が最大
大学生にあたる19〜22歳の子どもがいる場合、控除額は63万円。
教育費の負担が大きい世代への配慮として、一般の38万円より25万円加算されています。
老人扶養親族(70歳以上)は同居・別居で控除額が変わる
70歳以上の親や祖父母を扶養している場合、同居で58万円、別居で48万円の控除額です。
注意点として、長期入院は「同居」として扱われますが、老人ホームへの入所は「別居」として扱われます。この区分で控除額が10万円変わるため、該当する方は確認しておきましょう。
16歳未満の子どもには扶養控除が適用されない
16歳未満の子どもは扶養親族には該当しますが、扶養控除の対象にはなりません。
2011年の子ども手当(現在の児童手当)創設に伴い廃止されました。
ただし、16歳未満の扶養親族は住民税の非課税判定に影響します。
年末調整の「住民税に関する事項」欄への記載を忘れると、住民税が高くなるケースがあるためご注意ください。
【令和7年新設】特定親族特別控除で大学生の子がいる家庭の控除が拡大
令和7年度の税制改正で「特定親族特別控除」が新たに設けられました。
19歳以上23歳未満の子どもがいる家庭に影響する制度です。
これまでは、この年齢の子どものアルバイト収入が年123万円(所得58万円)を超えると、63万円の扶養控除が一気にゼロになっていました。
新制度では、年収150万円(所得85万円)までは63万円の控除が維持され、年収188万円(所得123万円)まで段階的に控除が受けられます。
大学生の子どもがアルバイトをしている家庭では、収入の上限を気にする必要が軽減された形です。
所得58万円以下の判定方法|給与・年金・複数収入のケース別

所得要件の58万円以下に該当するかどうかは、収入の種類によって計算方法が変わります。
パート・年金・複数収入のケース別に確認しましょう。
パート・アルバイト収入のみの場合|年収123万円以下が目安
パートやアルバイトの給与収入だけなら、年間の収入が123万円以下であれば所得58万円以下に収まります。
| 給与収入 | 給与所得控除 | 所得税金額 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 55万円 | 45万円 | ○ 対象 |
| 123万円 | 65万円 | 58万円 | ○ 対象(上限) |
| 130万円 | 65万円 | 65万円 | × 対象外 |
年金収入のみの場合|65歳未満と65歳以上で基準が異なる
公的年金だけを受給している場合、年齢によって控除額が異なります。
| 年齢 | 年金収入の上限 | 計算の根拠 |
|---|---|---|
| 65歳未満 | 118万円以下 | 118万円 − 公的年金等控除60万円 = 所得58万円 |
| 65歳以上 | 168万円以下 | 168万円 − 公的年金等控除110万円 = 所得58万円 |
給与と年金の両方がある場合の計算方法
給与と年金の両方の収入がある場合は、それぞれの所得を計算して合算します。
計算式
- 65歳未満:(給与収入 − 65万円)+(年金収入 − 60万円)≦ 58万円
- 65歳以上:(給与収入 − 65万円)+(年金収入 − 110万円)≦ 58万円
計算例:65歳以上の親が年金120万円+パート収入50万円の場合
- 年金の所得:120万円 − 110万円 = 10万円
- 給与の所得:50万円 − 65万円 = 0円(マイナスのため0円)
- 合計所得:10万円 → 58万円以下のため扶養親族に該当
このように、複数の収入があっても合計所得が58万円以下であれば条件を満たします。
親を扶養に入れられるかどうか迷った時は、合計所得で判定してみてください。
扶養親族に関するよくある質問
別居している親を扶養親族にできるか
できます。同居していなくても、定期的に生活費を仕送りしている実態があれば「生計を一にしている」と認められます。仕送りは銀行振込など記録の残る方法で行うのが確実です。
70歳以上の親の場合、別居でも老人扶養親族として48万円の控除を受けられます。
共働き夫婦の場合、どちらの扶養に入れるべきか
所得税法上、1人の扶養親族を複数の納税者が重複して申告できません。
一般的には所得が高い方の扶養に入れると節税効果が大きくなります。ただし、住民税の非課税判定や社会保険の扶養など、所得税以外の影響もあるため、ご家庭の状況に応じた判断が必要です。
年の途中で扶養親族の条件を超えた場合の対応
扶養親族に該当するかどうかは、その年の12月31日時点の状況で判定します。
年初に扶養親族として届け出ていた子どもが、アルバイト収入の増加で年末時点の所得が58万円を超えた場合、その年は扶養控除を受けられません。年末調整で修正するか、確定申告で訂正する必要があります。
扶養親族の条件を正しく確認して控除の漏れを防ぎましょう
扶養親族とは、配偶者以外の親族で、所得58万円以下などの4つの条件を満たす人のことです。
控除額は年齢によって38万〜63万円。
特に19歳以上23歳未満の子どもがいる場合は63万円と大きな控除を受けられます。
令和7年の税制改正で所得要件が引き上げられ、特定親族特別控除も新設されたため、以前は対象外だった家族が今年から扶養親族に該当するケースもあります。
別居の親や義父母も条件を満たせば対象になります。使える控除を見落とさないよう、この機会にご家庭の状況を確認してみてください。

