相続税新聞

2015年第9号

相続税

 相続税は、原則として、相続が発生してからでは減らすことができません。相続税の総額は亡くなった時点の財産の時価と法定相続人の数で決まります。遺産分割の仕方によって増減するものではありません。例外的に、前号までで案内した「配偶者の税額軽減」「小規模宅地等の減額」のような一定の人が取得した場合に相続税が減る制度があるのみです。相続人はその取得した財産の額に比例して相続税を負担することになるので、あくまで、遺産分割の仕方で変わるのは各人の相続税負担額だけなのです。

相続税の計算は?

 相続税の計算ですが、先ず亡くなられた方(被相続人)の財産を相続時点での時価で評価します。時価評価の難しい土地や非上場株式などについては、財産評価の方式が定められており、その評価方式によると著しく時価と異なる場合を除き、原則としてこれを用いることになります。そして、この時価評価された財産の額から債務の額を引いた額を、実際の遺産分割内容はさておき、各相続人が民法で定められた相続分で取得したものとして相続税額を計算します。
 例えば、被相続人の純資産額が6億円で、相続人が配偶者と子供2人の場合、配偶者が3億円(相続分2分の1)、子供2人がそれぞれ1.5億円(相続分4分の1ずつ)の取得をしたものとして、累進税率を適用し、税金を計算します。この例の場合、配偶者1億800万円、子それぞれが4300万円と計算され、その合計の1億9400万円が6億円の財産に対する相続税となります。
 この1億9400万円を実際の相続による財産の取得分に応じて割り振ります。そして、配偶者については、以前案内しました通り、配偶者の税額軽減を受けることになります。
 実際の取得が、配偶者2億、子供2億ずつの場合、
各人1億9400万円×(2億×6億)=6400万円の納税となります。
そして、配偶者の税額軽減で、配偶者の相続税額は0円、子供がそれぞれ6400万円となります。

対策の方向性

 「相続税対策は事前に」なのです。相続税が減るように財産を贈与することもそうですが、揉めないように遺言を残す事も必要かもしれません。土地を売却してしまう他にも、土地の整地をしたり、境界を確定しておくとか、建物で不要なものを取り壊したり、修理やリフォームするというのは、財産も減りますが、相続税も減るので、相続人にとっては助かるかもしれません。相続後に相続人がこれらのことを行うと、相続税の納税後の財産から相続人が出費することとなるのですから。
 ところで、一見、いろいろな方法があるようですが、実際は、財産の状況や相続人の同族会社への事業参画の有無などから、意外ととることのできる方法が少なかったりします。とることのできる方法を見極めて、財産の整理をしながら、時間をかけてコツコツ贈与などしたり、問題を解決して行くのが良いと思います。
 そしてやるとなったら、早い時期から行うと良いでしょう。といいますのも、毎年贈与をしていても、相続があった場合、その相続から3年以内にした贈与は、相続税計算に含まれてしまうからです。

2015年第8号

配偶者への優遇

 前号で案内しました「小規模宅地等の特例」は、様々な「一定の要件を満たす」ことにより、住宅等の敷地の相続財産としての評価が軽減され、相続税額が減少するというものでした。配偶者の場合には、その要件がかなり緩く、住宅を取得さえすれば、その敷地の評価が軽減されるのです。
 これとは別に、配偶者の相続税そのものを減らす「配偶者の税額軽減」という制度が設けられています。これは、その財産の移転が同一世代間であること、配偶者は被相続人の財産の形成に寄与したこと、配偶者本人の老後の生活費が必要であること等の理由から設けられております。

配偶者の税額軽減

 「配偶者には相続税がほどんどかからない!?」などという話を聞いたことありませんか?それはそうなんですが、そうしないことがほとんどです。
 どういうことかと言いますと、これは「配偶者の税額軽減」という制度によるもので、「配偶者の取得した財産が1億6千万円まで相続税はかからない」というものです。
 相続税は被相続人の財産に応じて、まずみんなで収めるべき税額が計算され、各相続人が取得した財産に応じた相続税を負担をするのですが、配偶者の場合、1億6千万円まで(資産家の配偶者の場合には、1億6千万円以上の財産を取得しても、それが法定相続分以下であればかかりません)の財産については、相続税が軽減されるからです。
 ですから、前回ご案内した「小規模宅地等の特例」で配偶者の相続財産を圧縮し、「配偶者の税額軽減」で相続税額を減少させることにより、配偶者の相続税負担はゼロあるいは、極めて低いものにすることができます。

次の相続はどうなる?

 配偶者の相続税負担が極めて低いなら、できるだけ配偶者に財産を相続してもらうかというと、次の点を検討すると、そうしない事がほとんどなのです。

① 配偶者は今回の被相続人と同世代ですから、「次の相続」は決してそう遠い未来ではない
② 配偶者が被相続人となる次の相続では「配偶者の税額軽減」を受けられる相続人がいない
③ 今回の相続より、次の相続は相続人が一人少ないので、基礎控除額・非課税額が減少する

 つまり、配偶者が多くの財産を相続した場合、その財産を短期間で費消あるいは贈与して、配偶者の財産を減らさないと、次の相続でかえって相続税がかかってしまいます。今回だけでなく、次回の相続税負担を見据えて相続することとなります。
 さらに、「次の相続」では小規模宅地等の特例が受けられ無いというケースも多くあります。私自身のケースをご案内しますと、父の相続があったとして、実家を母が取得する分には小規模宅地等の特例の適用が受けられます。しかし、母の相続では自分も妹も別に持家があるため、小規模宅地等の特例を受けることができません。

2015年第7号

紙による申告書提出

 電子申告が当然になった今、紙で申告書を提出しなければならない時、逆に戸惑います。
 個人事業者の方が亡くなられた場合の所得税の準確定申告書の提出がそうです。まず、イレギュラーなタイミングでの源泉徴収票などの資料収集に時間がかか ります。さらに、税金計算の基となる収入・支出は、亡くなられた日までの期間分だけを計上するので、その作業で頭を悩ませます。そして申告ですが、紙の場 合、署名・押印や書類の添付、控えを余分に印刷し、税務署に持参または郵送して、収受印をもらう等々、様々な作業が必要となります。亡くなられた日から 4ヵ月以内に、準確定申告書を提出しなければなりませんが、4ヵ月はあっという間です。

小規模宅地等の特例

 タイトルの「小規模宅地等の特例」から、「小規模」=一定の面積まで、「宅地」=建物の敷地として利用されている土地について、「特例」=評価額を減らす制度、と覚えてください。
 この特例、もっとも簡単なケースですと、配偶者が自宅敷地を取得した場合に適用ができます。
 例えば、旦那さんが亡くなられて、奥さんが自宅建物の敷地300㎡、評価額3,000万円の土地を相続した場合、この特例制度により、評価額が2,400万円減少(8割引き!)し、600万円で計算されます。適用される相続税率が最低の10%でも、2,400万円評価額が下がっていますから、その10%の240万円、相続税が低く抑えられます。
 ですから、この特例を利用しない手はありません。
 しかしながら、上記の例にある「配偶者が自宅敷地を取得した」ケース以外では、適用が難しいことが多いのです。まず、配偶者以外の相続人が取得する場合には更なる要件があります。また、対象となる土地も、未利用地・青空駐車場・資材置き場・市街地農地などでは適用できません。このように意外と対象となる土地も少なかったりします。

小規模宅地等の特例(2)

 この特例制度、配偶者以外でも適用できます。この特例は、相続等により「一定の建物等の敷地」を「一定の者」が取得した場合、「一定の面積」まで、その評価額を「一定の額」減額するという制度です。う~ん、簡単に言おうとすると「一定」だらけになります。

「一定の建物等の敷地」
自宅建物の敷地/事業用の建物・構築物の敷地 について、

「一定の者」
配偶者/生計一の相続人/更なる要件を満たす生計別の相続人が、

「一定の取得」
取得(配偶者)/取得し申告期限まで居住継続(生計一/別の相続人)する場合、

「一定の面積」
居住用330㎡迄+事業用400㎡迄/貸付事業用200㎡迄 の面積について、

「一定の減額」
居住用・事業用8割/貸付事業用5割 の評価減をする制度です。

 本当に複雑でして、この「小規模宅地等の特例」関する専門書は数多く出版されています。

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