相続税新聞

2015年第6号

人間は感情の動物である

相続の話をしていると、人間はしばしば、理性ではなく感情で動く、ということを目の当たりにします。こちらは、税務の専門家ですので、また、当事者ではないので、損得でしか案内できません。しかし、本人は人間関係や周囲の状況、過去のしがらみ、時に、未来に関係を断つために、金銭的には決して得とは言えない選択をします。完全に当事者とはなれないのですが、できるだけ相手の立場に立って考えてみますと、そのような選択肢はなくもないのかなぁ、と思うことがあります。

会社への寄付金

 会社への貸付金はありませんか?これはれっきとした相続財産です。貸付金額がそのまま相続財産の額となります。仮に会社の業績が悪く、回収可能性がとても低い場合でも、貸付金が100%の額で評価されてしまいます。
 返済により回収していますか?さらに貸付けが増えていますか?何よりもこの貸付金に対するの将来の対応は考えていますでしょうか?
 会社へ贈与して、貸付金を無かったことにし、相続財産を減らしますか?
 配偶者や子に貸付債権を贈与して、相続財産を減らしますか?等々。 
 今回、ウチの会長においては、次のようにしました。会社で金融機関から新たに借入れをし、その資金をもって、貸付金の一部を返済してもらいました。しかし、それを会長に渡すと使ってしまいますので、間髪を入れず、そのお金を原資に一時払い終身保険に加入してもらいました。この結果、将来の相続財産が貸付金から生命保険に代わっただけですが、死亡保険金にある非課税枠を有効に使うことで、相続税の節税を図ったわけです。

相続時精算課税

 以前、贈与税の制度で、「相続時精算課税」という制度について、ご案内しました。相続が遠い将来であっても相続税計算に含めなければいけないなど、あまりオススメできない制度と案内したのですが、やはり使いたいというケースはあるようです。
 先日、相談があったケースは、将来、兄弟間で相続トラブルが多分に予想されるとのことで、弟さんが相談に来られました。(なお、ご本人が特定できないように内容を一部変更しています)
 現在、弟は父所有の土地に、弟が建物を建てて住んでおり、兄が父所有の土地建物に両親と住んでいるとのことでした。将来、両親の介護は兄にしてもらう合意はできており、父母は十分な財産があるはずで、それは全部兄が取得してもらってよいので、弟さんは現在住んでいる建物の土地(2,000万円)さえもらえれば何もいらないとのことでした。
 しかしながら、実際に相続が発生すると、その土地についてすら兄に何か言われそうなので、父母が健在の今のうちに父の土地を弟さんの所有にする方向で話を進めたいとのことでした。
 取得の仕方ですが、弟さんは現在お金が無いとのことで、父から土地を購入することはできません。また、通常の贈与(暦年贈与)では、基礎控除額110万円を超える額が大きく、贈与税が600万円弱になり、これも採用できません。ですが、相続時精算課税制度なら2,500万円まで贈与税がかかりませんから、今回のケースでは贈与税負担なしで済みます。将来の相続では、父には他の財産が十分あるので、それを兄に取得してもらえば、今回、弟さんが土地を先に贈与により取得しても、遺留分の問題はクリアできそうでした。将来の相続税負担の可能性はあるものの、暦年贈与で今すぐ税額600万円を払うことはできないので、相続時精算課税制度を選択したいとのことでした。

2015年第5号

用語解説

 出来るだけ専門用語は使いたくないのですが、紙面の関係上、次の用語を使用します。

相続税の加算

 相続税の加算という制度があります。子が健在なのに相続財産を遺言等により孫へあげると、相続税の課税が一世代飛ばされることになります。このような課税の回避を防ぐために設けられています。また、兄弟姉妹が相続した場合には、財産の取得の必然性が低いので、適用されます。
このような場合、孫へあげた財産、兄弟姉妹が取得した財産については、通常の相続税額に加え、その2割を加算した税額を納めることとなります。
2割増しの対象とならないのは「配偶者・子・養子・父母・代襲相続人である孫」などです。
 一方、加算対象となるのが、「孫(代襲相続人でない)・孫養子・祖父母・兄弟姉妹・甥姪」などです。
孫を養子にした場合、相続人となるので、以前は2割加算とならなかったのですが、平成15年の改正により2割加算されることとなりました。なお、「子」が先に死亡している場合、「孫」が代襲相続人となり、この場合の相続税には、加算がされません。

代襲相続

 相続があった時に、本来の相続人が死亡している場合に、相続人の地位を引き継ぐことを「代襲(だいしゅう)」といいます。具体的には、第一順位の相続人である「子」が既に死亡している場合、孫(相続人の子)が代襲相続人となります。
 孫が死亡している場合、さらに曾孫(相続人からすると孫)が相続人(再代襲)となります。子や孫などの直系卑属がすべていない場合、第二順位である父母・祖父母などの直系尊属が相続人となります。
 この直系尊属がいない場合、第三順位の兄弟姉妹が相続人となります。この兄弟姉妹が既に死亡している場合、兄弟姉妹の子(被相続人の甥・姪)が(代襲)相続人となります。なお、この甥姪が死亡していた場合、その甥姪の子が相続人(再代襲)となることはありません。

2015年第4号

都度贈与をうまく使いましょう

  一昨年改正の教育資金贈与は、適用年齢は30歳迄ですので、子や孫の年齢が30歳間近あるいは超えている場合には、使えません。本年改正の「結婚・子育て資金の一括贈与」は適用年齢は50歳迄と対象年齢が広いので、自分自身がもらえる!と思ったのですが、詳細を見ると用途が結婚前後の支出中心のようです。
 しかも、Q&Aにしっかり書いてありました。「扶養義務者相互間で必要な都度支払われる生活費または教育費については贈与税は非課税」と。相続税対策においては、必要な都度の贈与もうまく使いたいものです。

生前贈与加算

 相続対策をする上で、頭の片隅に置いていただきたいのが、相続人への「相続開始前3年以内の贈与財産の加算」という制度です。相続があった場合、「亡くなられた人から、その亡くなった日からさかのぼって3年前の日以後に相続人にされた贈与」は、相続財産に含めて再計算がなされるというものです。贈与税は毎年110万円までは非課税というのはご承知と思いますが、この110万円以下の贈与も3年以内のものは加算することとなります。これは相続人への、亡くなる直前の駆け込み贈与を防ぐものです。よく「孫への贈与がよい」と言われるのは、相続人でなければこの再計算がなされないからです。
 3年前とは例えば、平成27年4月29日に相続があった場合、平成24年4月29日以後に相続人が亡くなられた人から受けた贈与は相続財産に取り込まれて再計算されます。ですから、可能な限り早めに贈与を開始すべきです。
 もちろん相続人が、亡くなった人から3年以内に贈与を受け、その際に贈与税を納めていた場合には、その支払った贈与税は、前払いの税金として今回の相続税から控除します。

結婚・子育て資金の贈与

税制面からの少子化対策として、本年の税制改正で新設されました。この制度は父母や祖父母が、子や孫の結婚・子育てに必要な資金を贈与する場合に、1000万円まで非課税とする制度です。うち結婚資金としては300万円までとなっています。非課税の対象は、婚礼費用、結婚に伴うアパート契約費用・引っ越し費用、出産費用・不妊治療の費用、子の育児にかかる費用などです。
 仕組みは一昨年に創設された教育資金の一括贈与によく似ています。手続きは、税務署ではなく、金融機関において「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出します。目的にかなった支払いがあった場合には、金融機関にて領収書を提出をします。50歳に達して残っていると贈与税の申告となります。教育資金の一括贈与と大きく異なる点は、結婚・子育て資金をもらった人が、使い切る前に資金を贈与した人が亡くなった場合には、その時点までにもらった人が使い切っていない金額は、贈与した人の相続財産として取り扱われ、相続税の申告計算がなされる点です。

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